諸外国の訪問看護ってどうなっているの?(イギリス編)

海外旅行に行くことはあっても、海外での訪問看護師の働き方って知る機会がないと思います。

今回は、イギリスおける訪問看護についてご紹介したいと思います。

イギリスと日本の訪問看護師の役割は違うんでしょうか?

すべての国民が原則無料?!

イギリスの保健医療福祉制度は、NHS(National Health Service; 国民保健サービス)を中心に全国的に提供される、公平無料の包括的保健医療サービスと、各地方自治体の責任によって運営・提供される社会福祉サービスの 2 本の柱で構成されます。

訪問看護サービスは NHS が提供する保健医療サービスに含まれており、租税を主な財源としている。NHS の財源は、租税による国の一般財源からの拠出が約 80%、国民保険料からの拠出が約 18%、ごく一部のサービスに対する患者負担約 2%となっており、訪問看護を含めた保健医療サービスの利用は基本的に無料です。

地域保健サービスへの移行

近年のイギリスの保健医療政策は、増え続ける高齢者の長期的で多様なニーズに対応するため、病院での入院医療から地域保健サービスへの移行をすすめており、住み慣れた地域での効果的で効率的な訪問看護でのケア提供が目指されています。イギリスの地域保健サービスのうち、日本の訪問看護に対応するサービスは、地区看護と呼ばれる活動に包含されます。地区看護は、「主に 1)病院から退院した人々、2)複雑で長期的なケアニーズを抱える人々、3)衰弱状態あるいは終末期にある人々を対象として、適切な看護ケアプログラムを計画・提供・評価する」ことを目的とした包括的な活動と定義づけられます。

チームでサービスを提供

訪問看護の中核人材は地区看護師(District nurse)と呼ばれる上級スタッフであり、一般看護師(registered nurse)やヘルスケアアシスタント(Health care
Assistant)を含む地域保健チームを率いて、家庭医(General practitioner)と連携を取りながら、サービスを提供しています。

地区看護師は、訪問看護の開始時に利用者宅を訪問してアセスメントを行います。一般看護師は、日常的に利用者宅を訪問し看護計画に沿って利用者ニーズに合わせた医療処置を提供します。地区看護師は主にケースマネジメントや他の専門職スタッフとの連携コーディネートを担う、地区看護の中心的存在です。また、地域看護師長は、複雑な症状を抱えている人のアセスメントやケースマネジメントを担当する。ただ、仕事内容に関しては事業所や地域によっても異なります。

※ヘルスケアアシスタント(HCA:Health Care Assistant)は医療現場で医療行為以外のサポートを行う人のことをいいます。 

給与は棒給制

イギリスの NHS 下では、家庭医の診療所を除く保健医療サービスの事業者は NHS から配分された包括予算によってサービスを運営しており、NHS 雇用の保健医療スタッフへは俸給制によって報酬が支払われていることが特徴です。

各事業所で勤務するスタッフ俸給について、医師・歯科医等を除く全ての NHS スタッフは、Agenda for Change と呼ばれるスキームに基づき、それぞれの職種ごとの等級(Band)と勤続年数等に応じて決定されています。

3つの柱

保健省は、地区看護サービスが担う役割として、1)地域の全住民の健康状態及び症例数の調査や管理マネジメント、2)在宅で衰弱状態あるいは回復過程にある患者や終末期患者に対する支援とケア、3)自立した生活を送るための支援とケアの 3 つの柱を挙げています。

訪問看護における教育制度

イギリスにおける保健医療福祉人材の資格認定や教育基準は、国ではなく各専門職団体の自律・自主規制に任されているのが特徴です。訪問看護の担い手となる看護スタッフに関しては、NMC(Nursing and Midwifery Council; 看護助産審議会)という専門職団体が教育や資格認定の基準・ガイドラインを設定し、質の担保を図っています。
まず原則として、看護師として NMC に登録されるためには、大学学部以上の教育レベルが必要です。かつては高等教育機関で看護学のディプロマを取得すれば、学士号はなくても看護師登録が可能でしたが、2013 年度入学生からはすべてのコースが 3〜4 年間の学士課程となるように改革されました。

地区看護師や保健訪問員などの上級資格を得るためには、追加で最低 1 年の専門プログラムを受ける必要があります。地区看護プログラムでは、臨床看護実習、限定的な薬剤処方、ケースマネジメントやリーダーシップ研修など、その役割に応じた計画・調整能力の訓練が盛り込まれていることが特徴です。

地区看護師などの上級職と一般看護師の職能上の違いは、一部の薬剤に関する処方権の有無だけであり、それ以外の具体的な診療・看護行為の可否について NMC は規制していない。

人材不足

イギリスの全看護師数は増加している一方で、地域看護従事者の割合は増加しておらず、看護人材の地域への移転は未だ不十分だと言えます。また、地区看護師や保健訪問員等の上級スタッフの大幅な減少により、地域看護を担うチームが機能しなくなってきていることも懸念されています。

また、地区看護(訪問)に従事する看護師の高齢化が進み、更なる人員減少・不足も危惧されています。地域看護従事者の 38%は 50 歳以上となっており、急性期病棟などの職場環境での年齢構成(50 歳以上人口は 23.6%)と比較して高くなっています。

いかがでしたでしょうか?

無料で訪問看護、魅力的ですよね。

イギリスでは、訪問看護師とよばれるような職種はないんですね。職位いくつかが分かれているのが印象的でした。日本では、そのほとんどの役割を担っているので訪問看護師は忙しいんですね。

訪問看護師の給与制度、教育制度なども違って面白いですよね。日本みたいに、病棟から訪問看護初めてで訪問看護に転職とかできないんですね。

訪問看護師の転職を考える方で、海外での経験を考えている方の参考になればと思います。

あなたの訪問看護のスキルがイギリスでも発揮できるかも?